ソフトウェア・デファインド・モビリティの可能性を引き出す方法

ソフトウェア・デファインド・モビリティの可能性を引き出す方法 テクノロジー
  • 自動車産業では、社会的・経済的価値をもたらすソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)への移行が急速に進んでいます。
  • 現在、交通事故の90%以上はヒューマンエラーによるもので、高度な自動運転によって回避することができるようになります。さらに、SDVの登場は、2030年までに、6,500億ドルを超える価値を生み出すでしょう。

著者:Nikolaus Lang
Managing Director and Senior Partner;
Global Leader, Global Advantage Practice, BCG (Boston Consulting Group)

出典:世界経済フォーラムの記事(CC BY-NC-ND 4.0 International)

旧来のガソリンベースの内燃エンジン車から、より高性能で環境に優しい電気自動車や自動運転車へと、自動車は著しい変化を遂げています。シンプルかつ新しい表現をすると、自動車はハイテク製品になってきていると言えるでしょう。

そして、アナログ機械からソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)へのシフトに伴い、自動車産業とテクノロジー産業の境界は曖昧になりつつあります。

SDVがもたらす変化の大きさは、どれだけ誇張してもし過ぎることはありません。グローバルコミュニティの観点から見れば、この変化にSDVがもたらす大きな利点が表れています。

SDVの利点

安全性

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)やその他の信頼できる情報源によると、交通事故の90%以上はヒューマンエラーにより引き起こされています。そして、そのほとんどが、先進運転支援システム(ADAS)により防ぐことができたと考えられます。このシステムは、自動車の安全性を制御する数々のセンサーで構成され、最終的には自動運転車(AV)を実現させるものです。

サステナブルなモビリティ

SDVは、すでにソフトウェア技術スタックに統合され始めているインテリジェント自動車です。このソフトウェアは、電気自動車(EV)が最もエネルギー効率の良いパフォーマンスをするために必要なもので、インテリジェントEVは、テクノロジーの進化に伴い電力網の安定化にも貢献します。グリーンエネルギーが利用可能な場合には、自動車の充電をサポートしたり、分散型エネルギー貯蔵ユニットとしてEVを利用することで、電力需要の高い時間帯には余剰電力を電力網に戻したりすることも可能です。

都市部では、AVのカーシェアリングサービスを普及させることによっても、SDVの持続可能性が発揮されます。例えば、ニューヨークでは、これにより現在駐車場となっているスペースのうち約900ブロックが解放され、ロサンゼルスでは、年間270万トンの二酸化炭素排出量を削減できると試算されています。

包摂的モビリティ

SDVに備えられた、パーキングアシスト、モニタリング、車線逸脱警告などの機能は、運転を簡素化します。完全なAVが普及すれば、障害者や高齢者が、人に頼ることなくより自由に移動することができるようになるでしょう。また、AVは、ドア・ツー・ドアの移動とアプリでの呼び出しを可能にする、より革新的なオンデマンド・モビリティの新たな時代を切り拓きます。

SDVの市場ポテンシャル

SDVの登場により、自動車産業は、2030年までに6,500億ドル以上の価値を生み出すとされています。これは、世界の自動車関連の市場規模の15〜20%を占めることを意味します。SDVの成長に関するボストンコンサルティンググループ(BCG)の分析によると、自動車用ソフトウェアとエレクトロニクスによるOEMメーカーの売上は、2030年までに、870億ドルから2,480億ドルへと約3倍に成長する見込みです。また、車載ソフトウェアと電子機器のサプライヤーの市場規模は、2,360億ドルから4,110億ドルへと約2倍に拡大すると分析されています。

さらに、新たな自動車のプロフィットプール(EVやAV、その部品、ソフトウェア、アフターマーケットセールス、オンデマンド・モビリティを含む)は、2021年から2035年の間に900%成長する一方、従来のICE(内燃エンジン)車とサービスによる利益は、約20%減少するでしょう。

この成長の大部分は、自動運転やコネクティビティ機能を含むソフトウェア機能に対する消費者の購買意欲の高まりによるものです。こうしたドライバーの嗜好の変化は、先進コンピューティングや通信機器、デジタル制御装置、センサーといった、高度なカーエレクトロニクス・ハードウェアの需要に拍車をかけるでしょう。EVとAVの販売台数の増加を大きく支えているのは、中国や米国などの大規模市場です。

自動車産業を盛り上げる、産業横断のコラボレーション

進化するSDVを普及させる上で不可欠な存在である、自動車メーカー、テクノロジー企業、政策立案者は、それぞれ異なる課題を抱えています。自動車メーカーは、10年単位のイノベーションサイクルで、伝統的な内燃エンジン車を製造してきた100年来の歴史を背負っています。

一方、テクノロジー企業は、優れた技術を持ちながらも、自動車の製造とその分野への貢献は、モバイルデバイスを製造するよりもはるかに複雑であると感じています。公的なプレーヤーや政策立案者は、自動車が誕生して以来存在する主なモビリティの課題(交通渋滞、交通安全、大気汚染)に苦慮していますが、この課題は、SDVエコシステムにより実現できる的を絞ったユースケースによって対処することができます。

SDVを取り巻く環境で成功するためには、すべての主要なステークホルダーがマインドセットを変えなければなりません。独自の収益成長に焦点を当てた経営から、異業種コラボレーションと戦略的パートナーシップに基づく共同価値創造事業へと変化する必要があります。

SDVの発展を取り巻く状況に本質的に捉えた以下の洞察が、新たな産業横断コラボレーションが極めて重要な理由を明らかにしています。

SDVが出現する各段階において、製造と技術の複雑性が増し、イノベーションが重要な要素になります。自動車メーカーとテクノロジー企業は、スケールメリットを引き出し、リーダーシップを取り続けるために提携する必要があります。

コラボレーションは、SDVの部品、特徴、機能など技術スタックの分類を産業横断で共有することから始める必要があります。世界経済フォーラムとBCGは、「ソフトウェア駆動型の時代における自動車イニシアチブ(Automotive in the Software-Driven Era initiative)」を共同で立ち上げ、自動車企業とテクノロジー企業がSDVに関する共通理解を深め、協力することを支援しています。自動車、新型モビリティ、テクノロジー業界の大手30社以上が参加するこのイニシアチブでは、将来の開発やコラボレーションに役立つ、SDVを構成する6層の技術モデルを打ち立てました。

SDVの全ての要素が、地域差やコミュニティからの要求に影響を受ける可能性があります。そのため、企業は、自社が事業を展開する主要市場のルールや、消費者が好む機能やインターフェイスに基づいた、新製品、プラットフォーム、官民パートナーシップのための、ターゲットを絞ったアプローチを設定する必要があります。

SDVがさらに発展していく中で、製造プロセスの簡素化と、業界や事業規模の再構築が必要になるでしょう。同時に、最先端のテクノロジーソリューションの開発や、プラットフォームの効率的な統合を迅速に行うために、業界全体で相互運用可能なプラットフォームを構築することが不可欠となります。従来とは異なり、パートナーシップが最優先となるこの新しい世界では、自動車のあらゆる部分における提携とコラボレーションが、新たなスーパースキルとなるでしょう。

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