日本の中国依存とサプライチェーンの問題

日本の中国依存とサプライチェーンの問題 経済

 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中のサプライチェーンと経済活動に深刻な影響を与えた。日本も例外ではなく、中国に集中した生産拠点のために、グローバルなサプライチェーンの脆弱性が露呈した。日本は、サプライチェーンのレジリエンス(回復力)を高めるために、どのような政策をとってきたのか。そして、その政策は成功しているのか。また、日本が直面する主な課題は何か。本稿では、これらの問いに答える。

 日本政府は、2020年初頭からサプライチェーンのレジリエンスを取り戻すための対策を講じてきた。2020年には、経済産業省(METI)が、日本企業に対して、日本や東南アジア諸国への生産拠点の移転を支援するために、二つの補助金制度を創設した。一つは、「サプライチェーン強化・国内投資促進事業」であり、もう一つは、「サプライチェーン強化事業」である。

 「サプライチェーン強化・国内投資促進事業」は、日本で重要な製品や材料の新規工場や新設設備を建設する日本企業を支援することを目的としている。2020年には、METIは7月に57件(約530億円)、11月に146件(約2,300億円)の事業を採択した[^1][^2]。採択された事業は、二つのタイプに分けられる。一つ目は、海外で大量に生産されている戦略的に重要な製品や部品・材料(航空機部品、自動車用金型、化学肥料、ディスプレイ、電気自動車用バッテリー部品・材料、医療機器、医薬品原料、希少金属、半導体部品・材料・製品など)を生産する事業である。二つ目は、人々の健康や安全に欠かせない製品や材料(消毒用アルコール、コロナウイルス検査試薬キット、医療用ガウンや手袋、不織布マスク、外科用マスク、ワクチンなど)を生産する事業である。2021年7月にも、METIは151件(約1,900億円)の事業を採択した。今回は中小企業向けのカテゴリーが追加され、前述の二つのカテゴリーとともに66件が選ばれた。

 「サプライチェーン強化事業」は、中国以外の国々への生産拠点の移転や多角化を促進することを目的としている。特に東南アジア諸国への移転を優先的に支援する。2020年には、METIは7月に30件(約100億円)、11月に57件(約150億円)の事業を採択した。採択された事業は、主に自動車部品、医療機器、電子部品などの分野である。2021年7月にも、METIは30件(約100億円)の事業を採択した。

 これらの補助金制度は、日本のサプライチェーンのレジリエンスを高めるための一歩として評価できるが、その効果は限定的であると言わざるを得ない。まず、補助金の規模が小さいことが挙げられる。日本の海外生産拠点の数は約3万件にも上り、そのうち中国が約4割を占める。それに比べて、補助金を受けた事業はわずか数百件であり、その多くは部分的な移転や多角化にとどまっている。また、補助金を受けた企業も、中国から完全に撤退するつもりはなく、中国市場向けの生産は継続するというケースが多い。つまり、補助金制度は、日本企業の中国依存を大きく変えるものではない。

 次に、補助金制度が対象としている分野が限られていることが挙げられる。重要な製品や材料の定義は曖昧であり、政府が恣意的に選んでいる印象を与える。例えば、自動車部品や医療機器などは重要とされているが、食品や衣料品などは重要とされていない。しかし、食品や衣料品も人々の生活に必要なものであり、サプライチェーンの安定性や多様性を確保することは重要である。また、補助金制度が対象としている国も限られている。東南アジア諸国への移転を支援することは理解できるが、他の地域への移転を支援しない理由は明確ではない。例えば、インドやアフリカなども生産拠点として有望であり、日本企業の進出を促進することは日本の経済的利益や戦略的利益にもつながる。

 さらに、補助金制度が解決しない根本的な問題があることが挙げられる。それは、日本企業が海外に生産拠点を移す理由である。日本企業が海外に進出する最大の理由は、国内市場の縮小である。日本は少子高齢化や人口減少により、国内市場が縮小し続けており、海外市場への参入が必須となっている。特に中国は世界最大の市場であり、日本企業にとって無視できない存在である。したがって、日本政府がサプライチェーンのレジリエンスを高めるためには、補助金制度だけではなく、国内市場の活性化や拡大を図ることが重要である。国内市場が活性化すれば、日本企業は国内生産に回帰するインセンティブを得ることができる。また、国内市場が拡大すれば、日本企業は海外市場に依存しなくても成長することができる。

日本のサプライチェーンのレジリエンスを高めるためには、以下のような政策が必要であると考えられる。

  • 国内市場の活性化や拡大を図るために、消費税の引き下げや減税、社会保障の充実、移民の受け入れ、少子化対策などを行う。
  • 中国以外の国々との経済連携を強化するために、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や地域的包括的経済連携(RCEP)などの自由貿易協定に積極的に参加し、関税や非関税障壁を撤廃する。
  • 日本企業の海外進出を支援するために、海外の法律や規制、文化や習慣などに関する情報提供や相談窓口、金融支援や保険制度、人材育成や教育支援などを行う。
  • 日本企業の技術力や競争力を高めるために、研究開発やイノベーションの促進、知的財産権の保護、産学官連携の強化、規制緩和や事業再編などを行う。

以上のように、日本のサプライチェーンのレジリエンスを高めるためには、補助金制度だけではなく、より包括的で長期的な視点での政策が必要である。日本は、中国に依存しない多様で強靭なサプライチェーンを構築することで、経済的な安定性や成長性を確保するとともに、地域や国際社会における日本の存在感や影響力を高めることができる。そのためには、政府と企業が協力して、サプライチェーンのレジリエンスを高めることを優先的な課題として取り組む必要がある。

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