在日ドイツ商工会議所(略称:AHK Japan)はKPMGドイツとともに、在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2023」を2023年1月下旬から2月初旬にかけて実施いたしました。調査結果の要約は下記の通りです。
■ドイツ企業の注目度が高まる日本市場
3社に1社以上(36%)の在日ドイツ企業の本社が「価値を共有する同志」である日本にさらなる関心を示している
・在日ドイツ企業の96%が、日本の「経済的安定性」「政治的安定性」「社会的安定性」を最大の立地メリットと評価
・2022年、93%の企業が年間平均税引前利益を達成(2021年比11ポイント増)
・調達・購買における日本の重要度が上昇:2社に1社以上(51%)が、革新的で専門性が高い、日本のサプライヤーへ直接アプローチしている(前年比9ポイント増)
・第三国市場での日独間の協力がさらに活発化:66%の企業が第三国で日本企業とプロジェクトを遂行(前年比8ポイント増)
・大幅に上昇した経営課題:有能な人材の確保84%(前年比12ポイント増)、インフレ67%(前年比23ポイント増)
【調査概要】
調査名称 :在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2023」
調査期間 :2023年1月27日~2月6日
調査方法 :オンラインによるアンケート形式
調査内容 :2016年より毎年、
在日ドイツ系企業の事業実態や見通しを把握することを目的に実施
調査対象企業数:在日ドイツ系企業403社
有効回答数 :113社(28%)
【調査結果】 https://filehub.admiralcloud.com/dl/5/b60585cf-9f8c-4750-8dc3-0ac6b2dc0add
3月13日|東京/ベルリン 地政学的な緊張が高まり、フレンド・ショアリングが進むなか、ドイツ企業の日本への注目度はますます高まっています。このことは、在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)とKPMGドイツが共同で実施した最新の在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2023」の結果に表れています。今年の調査には、在日ドイツ企業113社が参加しました。
■日本の最大の強みは引き続き「経済的安定性」「政治的安定性」「社会的安定性」
グローバルに比較した際、日本はあらゆる調査において信頼性という点で常にトップスコアを獲得しています。今回調査に参加した在日ドイツ企業は、日本の最大の強みとして、経済的安定性(97%)、ビジネス関係の安定性と信頼性(96%)、そして安全性と社会的安定性(95%)を挙げています。
「この数字は、日本が安定したビジネス関係の保証人としての役割を担っていることを印象づけるものです。現在の不安定な時代において、これはさらに大きな利点となります。3社に1社以上のドイツ企業の本社が、価値を共有する同志である日本への関心を高めています」と、駐日ドイツ商工特別代表兼在日ドイツ商工会議所の専務理事であるマークゥス・シュールマンは述べています。
■業績が新型コロナ流行前の水準を上回る
在日ドイツ企業のファンダメンタルズは再び正常になりました:2022年、在日ドイツ企業の93%が年間平均税引前利益を上げ、2019年の新型コロナ流行前の水準を上回りました。 2021年と比較し、11ポイント上昇しました。年間平均税引前利益率が10%を超える企業の割合は、2021年と比較して6ポイント上昇しました。また、48%の企業(2022年:45%)は、日本が本社グループ全体での売上高および利益の中で上位5つの市場に含まれると回答しています。
2023年と2024年の展望にも、在日ドイツ企業は前向きな見解を示しています。4分の3(75%)の企業が2023年、2024年ともに売上高が引き続き増加すると予想しています。2023年、2024年に利益の増加を見込んでいる企業は、それぞれ63%と65%でした。
■日本は単なる販売市場ではない:調達、購買における重要性が大幅に増加
過去2年間と同様に、85%の企業は、日本で活動する最大の理由として、人口1億2,500万人を超える日本市場の販売拠点としての高い潜在力を挙げています。
新たに明らかになったのは、ドイツ企業の日本での購買意欲が高まっていることです。日本に進出しているドイツ企業の2社に1社(51%)が、革新的で、高い専門性を持つ日本のサプライヤーへの直接的アプローチを重要視しています。これは前年に比べ、9ポイント上昇しました。「ドイツ企業は、中国への依存度を下げ、より強靭になるために、調達の多様化を進めています。ドイツ企業はMade in Japanの品質を高く評価しています。さらに、3年前から着実に円安が進んでいることも、日本での購買を魅力的にしています」と、KPMGドイツのインターナショナルビジネス部門のトップであるアンドレアス・グルンツは述べています。
日本企業は、多くの業界で革新的なグローバルマーケットリーダーです。そのため、競合となる日本企業のリサーチ(60%、2022年:55%)や市場トレンドのリサーチ(57%)も相応に重要な役割を担っています。
在日ドイツ企業は、日本への投資を比較的抑制しています。前年同様、4分の3(75%)の企業が日本への投資を500万ユーロ未満とする予定と回答しています。また、5,000万ユーロから2億5,000万ユーロの投資を計画している企業はわずか4%でした。(1ユーロ=141円換算)
■第三国市場での日本企業とのビジネスはさらに活発に
ドイツ企業が第三国市場において日本企業とともにビジネスを行うケースがますます増加しています。調査した企業の3分の2(66%)が該当し、2022年の調査から8ポイント、2021年の調査からは18ポイントも上昇しました。共同プロジェクトは、中国を除くアジア(69%)、ヨーロッパ(51%)、中国(47%)、北米(40%)で主に行われています。
「日本企業は何十年も前から世界中のあらゆる大陸で活動をしており、ドイツには1960年代初頭から進出しています。世界各地で日本企業が確立した優れたネットワークは、時折ドイツ企業のビジネスを補完しています。まさに共同プロジェクトで活用することができるのです」と、アンドレアス・グルンツは述べています。
ドイツ企業が日本企業と協力することでビジネスチャンスを期待できると考えている分野は、環境保護(66%)、技術革新(59%)、エネルギー(55%)の分野です。
■経営課題の増加
ドイツ企業は、日本の良い点だけでなく、問題点もみています。「十分な能力を有する人材の確保は依然として最大の経営課題であり(84%)、前年と比較してその重要度は増しています(前年比12ポイント増)。これは成長に影響を与えるだけでなく、長期的には日本でのドイツ企業の競争力にも影響を及ぼします」とマークゥス・シュールマンは指摘しています。
在日ドイツ企業の経営課題として最も関連性が高かったのはインフレでした。67%の企業が経営課題だと回答し、前年に比べ23ポイントも上昇しました。「日本のインフレ率は4%と、2022年12月には過去40年間で最も高い水準に達しました。国際比較では、まだ比較的低い水準にあります。上昇の原因には、ロシアによるウクライナ侵攻の間接的な影響が挙げられます。47%(前年:35%)の企業がその影響を顕著に感じていると回答しています」とアンドレアス・グルンツは述べています。
■アジア太平洋地域統括本部は、主に日本、中国、シンガポールに
在日ドイツ企業の5社に1社(20%)が日本にアジア太平洋地域統括本部を置いており、同等に中国(20%)、次いでシンガポール(18%)と続きます。ただし、前年比では中国が5ポイント、シンガポールが3ポイント上昇しているのに対し、日本は2ポイント減少しました。
中国戦略・アジア戦略を見直す際に、ドイツ本社は日本の役割について集中的に議論しています。「最新の調査結果が示す通り、中国への依存度を下げ、多様化を図る上で、日本は決して第一の選択肢ではありません。しかしドイツ企業の5社に1社(20%)は、日本を検討対象とみています。比較的低めの人件費、政府からの補助金、そして価値を共有する同志としての枠組みが、軽視できない重要な役割を担っているのです」と、マークゥス・シュールマンは述べています。
本調査結果の詳細は、こちらからダウンロードできます:https://filehub.admiralcloud.com/dl/5/b60585cf-9f8c-4750-8dc3-0ac6b2dc0add
出典:在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2023」
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